正ミュオン寿命の精密測定
正ミュオン寿命の精密測定


正電荷ミュオンは弱い相互作用によって、ほぼ100%電子と2種類のニュートリノに崩壊します(右図)。ミュオン寿命の測定では、正ミュオンをある標的に止めて崩壊させ、放出される陽電子の時間分布を観測します。そしてその崩壊時間スペクトルの傾きから寿命を決定します。高精度測定には高統計が必要ですが、我々はこれをRIKEN-RALの大強度パルスビームを用いた新しい手法を確立することによってクリアして、新たな測定を行いました。
ところで、ミュオン崩壊を含む弱い相互作用と電磁気力は電弱標準理論で統一的に記述されます。この理論には実験で決定が必要なパラメータがあり、その1つであるフェルミ結合定数(GF)は通常、以下の式を用いてミュオン寿命(τ)から決定します。

ここで、 me, mμ, MWはそれぞれ電子、ミュオン、Wボゾンの質量、第2、3、4項はそれぞれ、電子の輻射補正、Wボゾンの輻射補正、2次のQED補正項で、これらは高精度に計算されているため、τからGFを1ppm以下の不定性で決定できます。従って、フェルミ結合定数を高精度で決定すると電弱標準理論の基本定数GFの精密決定が可能となります。
実験はポート2に右図のような実験装置を設置して行いました。正ミュオンビームをホルミウム(Ho)標的に静止させ、崩壊陽電子を両側におかれた640チャンネルある多芯型比例計数管(MWPC)で計測しました。右下図が約1011個のミュオン崩壊陽電子の時間スペクトルです。これをフィットすることによって、ミュオン寿命を高精度で決定しました。






